カインとアベル

 


目次

◆天地創造
◆アダムの創造
◆女の創造
◆蛇の誘惑
◆楽園追放
◆楽園追放
◆カインとアベル
◆ノアの箱舟
◆大洪水
◆鳩を放つ(ミレイ)
◆鳩を放つ(ドレ)
◆ノアの祭壇
◆受胎告知
◆羊飼いの礼拝
◆東方三博士の旅
◆三博士の礼拝
◆エルサレム入城
◆弟子の足を洗うキリスト
◆最後の晩餐
◆ゲッセマネの祈り
◆聖衣剥奪
◆十字架の下での悲しみ
◆十字架降下
◆我に触れるな
◆キリストの洗礼1
◆キリストの洗礼2
◆悪魔の誘惑
◆ペテロとアンデレの召命
◆マタイの召命

日本聖書協会発行『アートバイブル』より
『アートバイブル』の絵の使用については、当サイトより日本聖書協会に申請をして、同協会より許諾を得ています。」2007N10010 ●聖書からの黙想は、:坂野慧吉著「創世記」『新聖書講解シリーズ:旧約1」(いのちのことば社発行):を参照しています。

「名画で巡る聖書の旅」

バイブル・アンド・アート・ミニストリーズ / 代表 町田 俊之

■第7回 ティントレットの「カインとアベル」(1550-53年、ヴェネティア、アカデミア美術館)

カインとアベル <アートバイブル:p.23>
◆ 聖書箇所

  さて、アダムは妻エバを知った。彼女はみごもってカインを産み、「私は主によって男を得た」と言った。彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。
 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。もしもお前が正しいのなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」
  カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」
・・・主はカインに出会う者がだれでも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。カインは主も前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。
                           ー創世記4章1〜16節ー

◆聖書からの黙想
  カインは、主がアベルの献げものには目を留められましたが、彼の献げものには目を留められなかったことに、「激しく怒」りました。それは自分が無視され、アベルが認められたことでプライドが傷つけられたからでした。本来なら、カインは神の顧みを受けられない理由が自分自身の中にあることを認め、へりくだって悔い改めるべきでした。しかしカインは自己を正当化し、そして怒ったのです。
  そんなカインに対して神は悔い改める機会を与えましたが、カインは心をかたくなにし、自分の心にある怒りを具体的な行動に移しました。ここには人類最初の殺人事件が発生します。
心の中にある罪を悔い改めないままでいると、その罪は増大し、自分でも制御できないまでになってしまいます。しかし、殺人という大きな罪を犯したカインに対して、神は決して見捨てることなく、悔い改めるよう呼びかけておられるのです。
 
◆ティントレットの芸術
・ティントレット(1519ー94年)の特徴
  <生涯と特徴>
  ティツィアーノ亡きあと、ヴェネツィア派の最後の光芒を放ったのは、ティントレットで  した。ティントレットは、当時すでの一家をなしていたティツィアーノの工房に入門したものの、数日で追い出されたと言います。真偽のほどは確かではありませんが、巨匠がこの若者の才能に嫉妬したから、という説もあります。ティントレットが活躍しはじめたころには、ヴェネツィアにも対抗宗教改革の波が押し寄せ、またフィレンツェやローマからはマニエリスム様式が流れ込み、それらの影響の下で出発した。
  また彼は、ティツィアーノのように国際的な名声を求めず、あくまでも共和国内での仕事を望みました。水の都で生まれ育った生っ粋のヴェネツィア人としての自負と誇りがあったかも知れません。また熱心なカトリック信者だった彼は、時とともに宗教的主題の中に真の自己実現の場を見い出していきました。その中で特に「聖ロクス同信会館」の連作は、対抗宗教改革の典型的な表現に達しています。
  ティントレットの工房には、「ミケランジェロの素描とティッツィアーノの色彩」というモットーが掲げられていたといいます。ティッツィアーノの華麗な彩色や筆遣いを押し進めることで、ミケランジェロの素描に肉薄していき、彼の絵の構図はしだいに大胆になり、人体の動きやねじれは激しさを増し、明暗の対比は極端になっていきます。

◆絵画からの瞑想
  光と影によって強調された画面、薄暗い深い森の彼方で、兄カインは弟アベルを密かに呼び出して、怒りを込めて打ち殺しています。カインとアベルの動きの大胆さが、見る者に迫力を感じさせます。ここに人類最初の殺人事件が描かれているのです。ルネサンス時代にはなかった明暗の強調、体の動きやねじれ・・・後のバロック美術の特徴がティントレットによってすでに表われています。
  画面右下にはこの事件のきっかけをつくる羊の首が置かれており、殺される人物が羊と関わりのあった者であることを暗示しており、このような小さなヒントが聖書のどの場面であるかを教えてくれます。殺人事件の残虐さは、このティントレットの構図と筆跡をもって、より明確に、より大胆に表現されたのでした。

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