日本聖書協会発行『アートバイブル』より
『アートバイブル』の絵の使用については、当サイトより日本聖書協会に申請をして、同協会より許諾を得ています。」2007N10010
●聖書からの黙想は、:坂野慧吉著「創世記」『新聖書講解シリーズ:旧約1」(いのちのことば社発行):を参照しています。
「名画で巡る聖書の旅」
バイブル・アンド・アート・ミニストリーズ /
代表 町田 俊之
■第9回 ミケランジェロの「ノアの建造」
(1508-12年、ヴァチカン、システィーナ礼拝堂)
「大洪水」 <アートバイブル:p.30>
◆ 聖書箇所
洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山地はすべて覆われた。水は勢いを増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。
地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。 ー創世記7章17〜24節ー
◆ ミケランジェロの生涯
・前掲
◆聖書からの黙想
ノアとその家族は神の警告に聞き従い、箱舟も完成し、命じられた動物たちも箱舟の中に移されました。そこには、神様の家族への配慮や動物たちへの配慮と計画がありました。たとえ神によって全地が滅びても、かろうじて人類は生き延びることができるためでもありました。
いよい全地に40日40夜雨が降り続け、なお150日間、水の勢力が増し加わったといわれます。ノアからの警告を信ぜず、まさか洪水になろうと予想しなかった人々は慌てて高台に避難しますが、もはや手遅れでした。男をはじめ女も子どももその裁きからまぬがれることはできませんでした。そこには神の非情があるのでしょうか。いや神の警告に耳をかそうとしなかった人類の強情があったのでした。
◆絵画からの瞑想
ここに描かれているのは、女や子どもを後に残して、若者が我れ先に木によじ上ろうとしているどこまでも罪深い人間の姿です。洪水の前は、ノアのことばと行動に対して嘲笑し、信じようとしませんでしたが、今、押し迫る水の勢いの前で、自らの罪の実を刈り取らなければならないのです。ミケランジェロは、洪水の悲惨さ、また人間の罪深さをこのように若者や女や子どもを通して描こうとしたのかも知れません。この絵は部分的なもので、画面の右上には箱舟が水の上に浮いてノアとその家族が乗っている姿も同時に描かれています。まさに、神は救いも裁きもされる主権者であられ、現代も罪深い社会の中で、確実に裁きをされる神と神のことばを畏れ、如何にこの神に従うかが問われているのです。