鳩を放つ

 


目次

◆天地創造
◆アダムの創造
◆女の創造
◆蛇の誘惑
◆楽園追放
◆楽園追放
◆カインとアベル
◆ノアの箱舟
◆大洪水
◆鳩を放つ(ミレイ)
◆鳩を放つ(ドレ)
◆ノアの祭壇
◆受胎告知
◆羊飼いの礼拝
◆東方三博士の旅
◆三博士の礼拝
◆エルサレム入城
◆弟子の足を洗うキリスト
◆最後の晩餐
◆ゲッセマネの祈り
◆聖衣剥奪
◆十字架の下での悲しみ
◆十字架降下
◆我に触れるな
◆キリストの洗礼1
◆キリストの洗礼2
◆悪魔の誘惑
◆ペテロとアンデレの召命
◆マタイの召命

日本聖書協会発行『アートバイブル』より
『アートバイブル』の絵の使用については、当サイトより日本聖書協会に申請をして、同協会より許諾を得ています。」2007N10010 ●聖書からの黙想は、:坂野慧吉著「創世記」『新聖書講解シリーズ:旧約1」(いのちのことば社発行):を参照しています。

「名画で巡る聖書の旅」

バイブル・アンド・アート・ミニストリーズ / 代表 町田 俊之

■第10回 ミレイの「鳩を放つ」
(1851年、オックスフォード、アッシュモーリアン美術館)

「鳩を放つ」 <アートバイブル:p.31>
◆ 聖書箇所
  四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水が引いたかどうかを確かめようとした。しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 
  更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。彼はさらに七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。
                            −創世記8章6〜12節−

◆ ジョン・エヴァレット・ミレイの生涯と特徴(1829-96年)
・ ミレイは資産家の息子としてイングランド南部に生まれ、史上最年少の11歳でロイヤル・アカデミー付属美術学校に入学したほど才能にも恵まれていました。
・ 彼は「ラファエル前派兄弟団」なるグループを作って1849〜53年にかけて活動していました。この集団はアカデミーが推奨する典型化、理想化された表現から真っ向から対立する克明な写実や徹底した細部描写、また鮮やかな色彩が特徴であり、伝統的な絵画に慣れ親しんでいた人々からは非難されていました。しかし、有力な批評家ラスキンがかれらの支持を表明したこともあり、非難は次第に鎮まっていきます。
・ 彼の代表的な作品は、「オフィーリア」である。この作品はシェイクスピアの「ハムレット」
  の中に出てくるヒロインの名前で、ハムレットに捨てられ、父親を殺されたオフィーリアは
  悲嘆のあまり気が狂い、川に落ちて死んでしまう場面です。ここでの特徴は、植物の詳しい
  描き分けという自然主義的な側面と、これらの植物がオフィーリアの運命を暗示する象徴的な側面です。彼は、絵画の主題にそれまでにない催眠的、病的な効果を与え、世紀末の美術と文学に大きな影響を残しました。

◆聖書からの黙想
  ノアと家族、そして動物たちが箱舟に入ってから150日間、水は勢いを増していきました。恐らくこの期間の箱舟の中での生活は、決して快適であったとは言えないでしょう。神の摂理によって選び分けられても、様々な困難があったと思います。しかし、神はノアと動物たちを心に留められておられました。
  その後、天からの大雨が止み、水が次第に引いていきます。ノアは水が減り始めてから40日後に箱舟の窓を開けて烏を放ちますが、烏は地が乾き切るまで箱舟を出たり入ったりしていました。その後、鳩を放ちますが、一回目はそのまま戻って来ましたが、二回目はオリーブの葉をくわえて戻ってきました。オリーブの葉は、地が乾いて木が葉を付けていた証拠でした。そして、三回目。ついに鳩は戻ってくることはありませんでした。

◆絵画からの瞑想
  この絵は一瞬何の絵が描かれているか分かりにくいのですが、よくよく観察すると、ここには象徴的にオリーブの葉をくわえてきた鳩を安堵した表情で抱いている二人の女性が描かれています。この女性たちはノアの息子たちの妻たちです。女性の足もとが藁(わら)のじゅうたんとなっており、それが箱舟の中であることのヒントになっています。
  緑と白の色彩的な対照、また女性たちの若々しさ、彼女たちの喜びと安心の表情など、雨が止み、地上が見え始めたことのしるしであるオリーブの葉を見ての感動した女性たちの姿が、斬新な視点と見事な構成、そして的確な技術によって描かれています。


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