日本聖書協会発行『アートバイブル』より
『アートバイブル』の絵の使用については、当サイトより日本聖書協会に申請をして、同協会より許諾を得ています。」2007N10010
●聖書からの黙想は、:坂野慧吉著「創世記」『新聖書講解シリーズ:旧約1」(いのちのことば社発行):を参照しています。
「名画で巡る聖書の旅」
バイブル・アンド・アート・ミニストリーズ /
代表 町田 俊之
■第13回 ジェンティレスキの「受胎告知」(1637年、トリノ、サバウダ美術館)
ジェンティレスキの「受胎告知」 <アートバイブル:p.7>
◆ 聖書箇所
六か月目に、天使ガブリエルは、ナザレというガリラヤの町に神から遣わされた。
ダビデ家のヨセフという人のいいなずけであるおとめのところに遣わされたのである。
天使は、彼女のところに来て言った。
「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。」
マリアはこの言葉に戸惑い、いったいこの挨拶は何のことかと考え込んだ。
すると、天使は
言った。
「マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男
の子を産むが、
その子をイエスと名付けなさい。その子は偉大な人になり、いと高き方の子と言われる。
神である主は、
彼に父ダビデの王座をくださる。彼は永遠にヤコブの家を治め、その支配は終わることが
ない。」
マリアは天使に言った。
「どうして、そのようなことがありえましょうか。
わたしは男の人を知りませんのに。」
天使は答えた。
「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。
だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる。
あなたの親類のエリサベトも、年をとっているが、男の子を身ごもっている。
不妊の女と言われていたのに、もう六か月になっている。
神にできないことは何一つない。」
マリアは言った。
「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」
そこで、天使は去って行った。
-ルカ1:26〜38-
◆ジェンティレスキの生涯と芸術
・ アルテミジア・ジェンティレスキは、画家オラッツィオ・ジェンティレスキの娘としてローマに生まれ、父に絵を学びました。ローマ、フィレンツェ、ナポリで活動し、当時の女性画家としては異例の高い名声を博しています。1630年代末には、父とともに英国宮廷でも制作しました。
・ 彼女はいわゆる「カラヴァッジオ派」の画家の中でも傑出した存在であり、ナポリにカラヴァッジオの明暗法と劇的リアリズムを伝えた功績は大きいものです。
・ アルテミジアの作品には女性を主役にしたものが多くあります。ユディットと侍女、ミネルヴァ、クレオパトラなど、アルテミジアは聖書や古代神話や古代史に登場する多くのヒロインたちを描いています。
◆聖書からの黙想
マリアは、突然の天使の声を聞いたことに驚くとともに、天使が伝えるメッセージはさらに驚くべきものでありました。それは人間の知識や理解力を越えたものであるからでした。この出来事は、まず神が立案し、神から人に対して行動に移しております。すべての計画とその実行は神が先攻されていることがわかります。
マリアの驚きに対して、天使は旧約聖書の預言や神の全能性(それはエリサベトも身ごもっていること)を丁寧に説明し、決して力づくで納得させたわけではありませんでした。
神への信仰と従順の思いを抱いていたマリアは、ついに神のことばの前にへりくだり、それゆえに神のご計画が小さな自分を通してなされることを受け入れるという、誠に大胆な祈りを捧げることができたのでした。
◆絵画からの瞑想
・ 天使が舞い降りて、マリアに神からのことばを語っているところが描かれている。マリアは、天使の現れとそのことばに戸惑い、一歩退きながらも、神のご計画に対して真摯に受け止めています。
・ この絵から感じられることは、全体に動きが強調されており、今、まさに事が行われている情景を現在進行形で表わしていることです。また、光と陰によって迫力ある画面を構成して見る者に力強く訴えています。
・ 神は自ら行動を起こされ、一人の処女のところに天使を遣わして、ご自分のご計画を大胆に示されたのでした。
・ それに対するマリアは、恐れを感じながらも、自らの運命を神に捧げ、神のご計画を真摯に受け止めております。